そうだ 家、建てよう(2)

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ぎっしりと4件の査定を詰め込んだ日曜日に備えて、何日か前から妻がせっせと重曹やクエン酸を駆使して掃除をしておいてくれたおかげで、キッチン、風呂場、トイレはピカピカになった。あとは、各部屋に掃除機をかけたり拭いたりして、何とか当日の朝までにはバッチ来いな感じに仕上げた。

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そして、最初の不動産会社の人がやって来た。
1件目は、最初に日程を決めたB社。自社のサイトの情報では、スタッフは数人程度の小さな会社っぽい。
そのサイトでは、大手に任せると危ないとか、不動産業界の悪しき慣習みたいなことが述べられている。
これを読むと確かに、大手に頼むのがちょっと怖くなり、こんなことを書くぐらいだから、この会社ならちゃんとしてくれそうだ、という気にはなる。
しかし、スタッフ紹介というところをクリックすると、代表取締役の人が1人載っているだけで、しかも、「経歴00年」となっていたり、「売却査定への想い」という欄には「あああああ」とだけ書いてあったり、ツッコミどころも満載。
で、やって来たのはその代表取締役の人だった。
何しろ初めての査定なのでどう振る舞うべきか分からなかったが、取り敢えず話をしそうだったので、椅子を勧めて席に着いた。
まずは、綺麗にされてますねと褒められた。まあ、そのくらいは言うでしょう。
そして、同じマンションの他の部屋の販売価格を元に、大体2,300万円くらいという金額が提示された。
E社から電話で聞いていた2,700から2,800万円という金額からあまりにもかけ離れていたので、一瞬言葉を失ってしまった。
その後は、部屋の壁の一部が破損している箇所があったので、それを見てもらうついでに全室見てもらった。
正式な査定額は、会社に戻ってシステムに入力して算出し、翌日メールで送ってくれるということで帰って行った。
査定というからには、色々見て回って質問されるのかと思いきや、俺が促さなかったら他の部屋を見ずに帰ったんじゃないかというくらいあっさりしていた。
それよりも金額である。
そんなもん?って感じ。
あのE社からの金額を聞いていなければ、2,300万円と言われたら、えっ?そんなに高く売れるの?と舞い上がったかもしれない。
だが、希望の光に照らされた俺たちは、そんな金額では満足できない。
しかも、訪問査定を依頼すればもれなく貰えるという、不動産を早く高く売るテクニックが書かれている小冊子も貰えなかった。さすがは、売却査定額への想いが「あああああ」である。

俺と妻は少し不安な気持ちになり、老舗のF社を迎えるのであった。

最初の査定で、想定よりも低い金額を提示されてやや不安を覚えているところへ、2社目のF社の人がやって来た。

その営業の人は、靴はピカピカ、応対の感じも良し。名刺を見ると宅建も持っている。だが、先ほどのB社の人も宅建を持っていたので、この時点ではそれが当たり前だと思っていた。
F社は今回査定を依頼した中では唯一の老舗で、キャリアは圧倒的である。しかし、B社のサイトや、他のサイトで情報を収集していると、大手や老舗だからと言って信用してはいけないということが書かれていたので、俺たちもちょっと構えてF社の査定に臨んでいた。
F社の人は、同じマンションの他の部屋の実績をベースに平米単価を算出し、うちの部屋の平米数で掛け算した。
そして提示された査定額は2,880万円。
B社との差額は、実に580万円。
さすがにそのままの金額で必ずしも売れるとは思わないが、担当の人は、マンションを探している社長がお客さんにいるのでその方に声をかけてみると言い、具体的な当てがあるようだった。

また、駅直結の28階建タワーマンションの建設が予定されており、発売されたら周辺の中古マンション相場が下落すると言われているので今は売り時だという情報も教えてくれた。
丁寧な対応で信用できそうな人だった。何よりも、ピカピカの靴を妻が極めて高く評価していた。
査定額の高さもあるが、営業マンとしてF社の人が好印象だったので、何なら今すぐF社に決めて残りの査定をキャンセルしてもいいくらいだった。
でもまあ、ドタキャンは人としてあるまじき事なので、もちろんそんなことはしない。

B社の後とは打って変わって、強気になった俺たちは、余裕を持って次のG社を待っていた。

次回へ続く。

odorukame

町田康と内田万里とモーモールルギャバンが好きです。 InstagramとTwitterをやっています。 odorumachizoです。

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