町田康朗読&トークイベント in 原宿VACANT(2015年9月13日) (3/3)

最終更新日

こちら側のどこからも切れへんがな。
っていうか、どちら側のどこからも切れへんがな。

いっやー、これまた失礼しました。こっちの話ですので忘れてください。

トリは池澤夏樹

さて、最後に登場したのは、日本文学全集を編集し、伊藤比呂美と町田康を起用した、池澤夏樹です。

町田康が巻き起こした爆笑の余韻の中、冒頭のトークで「非常にやりづらい」と苦笑いして朗読が始まりました。
今昔物語から選ばれたのは、「約束を信じて人質をゆるす話」「大きな死人が浜にあがる話」などです。実はいずれの話も、福永武彦という人が訳したもので、その人は池澤夏樹のお父さんだそうです。
大きな死人の話はなかなかシュールで、浜辺に15メートルほどの巨人の屍体があがって、役人がいろいろ調べたりしたが、お上に報告すると面倒なので、ほっとけという事になって放置していたら腐ってきて異臭が遠方まで広がって、皆に知られるところなった、という話です。
まことに不勉強で申し訳ないのですが、池澤夏樹の作品は読んだことがありません。プロフィールを見ると、芥川賞や谷崎潤一郎賞など数々の受賞暦がある凄い方です。間近で朗読が聞けて、サイン本も入手したことだし、これを機に作品を読んでみたいと思いました。

朗読が終わり、休憩を挟んだ後は、出演者3人によるトークショーです。
伊藤比呂美が、さっそく町田康に「あんなのアリなの、ズルいわ〜、ムカつく」と、非常に悔しがっていました。言われた町田康は、そう?だって訳せって言われたから、みたいな顔をしていて面白かったです。
町田康は原文をパソコンのモニターの横に並べて、サクサクと訳していったそうです。こんなんでお金貰えるならいくらでもやると言い、やっていて楽しかったそうです。そりゃあ、あんなのが書けたら、書いてても楽しいでしょ。
伊藤比呂美は本当に悔しがっていて、原文にどこまで書いてあったの?「どすピンク」とか本当に書いてあった?などと追求し、それに対し、町田康は、現代語訳ですから、今の時代ならどう書かれるかを考えたらああなったと答えていました。
池澤夏樹は、町田康の言葉選びに言及し、「マジで?」などの卑近な単語を敢えて使う手法など分析していけば、町田康論が書けるんじゃないかと話していました。

町田康が、歌詞と詩についてこんな話をしました。曲に歌詞をつける場合、夜中に一人でブツブツと考えている様子は気が狂った様にしか見えないだろうが、俺天才ちゃう?って思えるものができたりする。ところが、いざ、スタジオで歌ってみると全然駄目だったりする。
文字のまま読まれる前提の詩と、曲にのせ音になる歌詞とは、作り方は全然違う、と。
また、町田康は浪曲好きで、たまにEテレの浪曲の番組にゲストで出演したりするので、録画を逃さないようにするのが大変なのですが、そんな彼が誰に頼まれたわけでもなく、新作の浪曲を書いているそうです。その際、浪曲というのは、独特の節回しで語られるものなので、リズムが必要である。なので、広沢虎造という名人の浪曲師を想定して書いている、と。
僕が小さい頃、父親が寝る時に毎晩浪曲のレコードを聴いていたという事もあり、僕も浪曲が好きです。町田康の書く浪曲は、間違いなく斬新なものになるはずなので、世に出ることがあるのなら、是非聴いてみたいと思いました。

質疑応答の時間が少し設けられ、ここで気の利いた質問ができれば町田康と言葉を交わせるチャンスだったのですが、とてもそんな度胸はなく、斜め前の男性が気の利いた質問をして、それに町田康が丁寧に答えるのをよだれを垂らして見てるだけでした。
残念。
最後に、今日が60才の誕生日という伊藤比呂美に池澤夏樹が花束を贈呈するというサプライズがあり、イベントが終了しました。
椅子だと思って座っていた席が、実はビールケースに布を掛けて座布団を敷いただけのものだったせいか、ケツがすっげー痛くなりましたが、町田康の放つ言葉のシャワーをたっぷり浴びる事ができて大満足のイベントでした。

(おわり)

odorukame

町田康と内田万里とモーモールルギャバンが好きです。 InstagramとTwitterをやっています。 odorumachizoです。

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